第20回 これから在宅介護をはじめるご家族の不安を軽減
-退院直後の集中サポート-|詳細
1.ご相談までの経緯
お一人暮らしで元気に過ごしていたB様は、脳梗塞により長期間入院し、「吸引・胃ろう管理などの医療行為が必要」「会話が難しく、寝たきり、日常動作全般の介助が必要」な状態となりました。介護が必要になったB様の退院後の生活について、ご本人の希望や、お子様のいる娘様夫婦の家庭環境等を検討した結果、有料老人ホームへの入居を選択。半年間の入院を経て、有料老人ホームに移ったB様でしたが、退院後2日で肺炎を発症し、再び入院することになってしまいました。
娘様は、B様の状態に大変なショックを受けました。前回退院時は、家庭環境等の事情から別々の生活を希望していましたが、「母と一緒にいられる時間はそんなに長くないかもしれない。母が自分らしく生活できるよう、私がそばで支えてあげたい」という気持ちが芽生え、今回はB様を自宅に呼んでご自身で介護することを決心。ご主人・お子様からも「うちで一緒に暮らそう」という後押しの言葉を受けて、娘様夫婦宅での在宅介護に向けた準備が始まりました。
退院に向けて、娘様は病院看護師から様々な介護指導を受けたのですが、なかなか自信が持てませんでした。特に吸引のケアの際に、B様の苦しそうな表情を見ると、「正しくできているのか?気管を傷つけないか?」と不安を感じました。前回の退院後にすぐ再入院となった経緯も、プレッシャーとなったようです。吸引を含めて、自宅が介護の場となることに見当がつかず、「自信がつくまでは、退院を延ばしたい」と考えるようになったそうです。在宅介護を支える在宅医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションの手配が整う中、娘様の不安はなかなか晴れませんでした。
娘様は悩んだ末、病院のソーシャルワーカーに抱えている不安について相談しました。するとソーシャルワーカーは、介護保険以外のサポートの選択肢として当社看護サービスを紹介。「手厚いサポートが得られるのであれば、ぜひ活用したい」とのご要望で、娘様より当社にお問い合わせをいただきました。
2.退院前の準備
「自分が介護をするイメージが湧かない。このまま母を退院させて大丈夫か不安…」とのお問い合わせを受けて、娘様と面談を行いました。
娘様の希望は「母が落ち着いて過ごせること」と「自分のケアに自信を持って在宅介護を始めること」でした。看護師は、「B様へのケアと、万が一状態に変化があった際の対応」と「娘様への手技確認・指導」を行うことを提案しました。利用期間については、「母が自宅の雰囲気に慣れ、自分もケアに慣れるまで、3日間位お願いしたい」とのご要望で、退院当日から3日間の訪問依頼となりました。
退院日の2日前には、娘様・病院担当者・在宅医・ケアマネジャー・訪問看護ステーション担当者が集まった退院前カンファレンスに当社看護師も同席し、療養方針やサポート体制についての情報を共有。その際に病室でB 様とご挨拶させていただき、病院看護師からは、ケアの仕方や注意点などのオリエンテーションを受けました。また、娘様・ケアマネジャー・訪問看護ステーション担当者と相談し、ステーションの訪問日時と当社の訪問日時について調整。その結果、当社看護師は退院日から3日間の毎日12時-17時の訪問となりました。
3.在宅介護がスタート
退院当日、当社看護師はB様・娘様と一緒に介護タクシーで娘様宅に移動。到着後、B様をベッドに移し、吸引機・オムツ等物品・コンセント類の配置整備を行い、介護しやすいベッドサイドの環境づくりをお手伝いしました。B様にとって病院以外の環境は久しぶりということもあり、移動に少し疲れた様子でしたが、状態は安定していました。娘様の手技については、吸引、胃ろうの管理、ベッド上での身体の向きの交換などについてアドバイスしました。大きなトラブルもなく、看護師は初日の訪問を終えました。
2日目、娘様が一晩過ごす中で感じた疑問を確認しました。吸引時の口腔内のケアや排泄ケア、入眠・起床時のケアなどについて、それぞれアドバイスしました。B様の状態は安定しており、お昼の胃ろうの際に少し気分が悪そうな表情もありましたが、それ以外は問題もなく過ごされました。
3日目は、娘様によるケアの総確認。吸引、胃ろう管理、排泄ケア、身体の向き交換などのケアを、退院当日とは違い、落ち着いて行うことができました。B様は引き続き落ち着いた様子で、前日、前々日よりも娘様やご家族の問いかけに対して笑顔が見られるようになりました。
3日目を終えて、当社看護師の訪問は終了。退院前には「3日間の訪問で足りなかったら、延長をお願いするかもしれません」と仰っていた娘様でしたが、「病院で教わったことを、看護師さんにひとつひとつマンツーマンで確認していただいたおかげで、家でも不安なく出来るようになりました。自信を持って介護を始められそうです」とのお言葉を頂きました。B様の状態も安定しており、前回の退院時のようなトラブルもなく病院から在宅での療養へとスムーズに移行されました。
完
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