疾患を抱えてもずっと自宅で過ごせるように(目次)
1.はじめに
認知症や精神疾患の初期状態であっても、家族にとっては非常に不安である。今後どのようになっていくのか、アドバイスが欲しいと思う家族は多い。本ケースは、老年性統合失調症の奥様に対して、日常生活の中で、共有する時間を持ちながら観察を行い、環境を整備している事例である。
2.認知症か精神疾患か
何らかの形で診断は付くが、ご家族にとって重要なのは、進行をできるだけ緩やかにすることと、できれば以前の状態に近づけたいということ。本ケースは、最初認知症ということで相談がもたらされたが、後に老年性統合失調症と診断が下った。介入開始後も、思い込みによらず、慎重なアセスメントを行いながら、ご本にとってよい環境構築を目指した。認知症であっても精神疾患であっても、ご本人がより安楽な時間を過ごせせるようにとの基本的なスタンスでサービスを継続している。
3.日常生活を共にする
服薬以外は特に医療行為というものがないため、毎回看護師が介入するのではなく、調理や日常的な趣味、アクティビティーのサポートが上手な介護ヘルパーも介入している。看護師と介護ヘルパーがチームを組めるのが弊社の特徴である。ただし、全ての情報は看護師の視点からアセスメントを行っている。日常生活を通して、自然体の対象者から情報を収集し、より適切なアセスメントを実現している。自費であるため時間的な制限がなく、生活の一部を共有するからこそ可能になるサポートである。
4.家族の精神的なサポートも
奥様を一人置いて出張することが不安であったご主人も、奥様の精神状態が安定するにつれ、不安が低減されたようで、担当スタッフとの面談時に不安を口にされることが無くなった。完治することは無くても、奥様の精神的な安定が夫婦の関係性を良好に保っているためと思われる。ご家族の精神的なサポートも重要なミッションである。
5.長期的にかかわることで信頼関係を築く
弊社がサービス提供を開始してから3年になる。その間、メインで介入する介護スタッフは何回か交代したが、アセスメントを行う看護スタッフは長いお付き合いである。また前任者からの情報はサマリーとして要約されているため、介護スタッフが交代しても継続的な関わりが可能となっている。このあたりもチームケアの利点と考える。スタッフ個人との信頼関係も大切であるが、組織的な関わりにより、お客様と組織との信頼関係が厚いことも大切であると考えている。
完
その他の利用事例
- 第28回 遠方の病院への転院
- 第27回 遠方で行われる結婚式への出席
- 第26回 ご家族の睡眠をサポートする「夜間の在宅看護」
- 第25回 プライベート看護を「すぐ利用したい」
- 第24回 他事業所の「家政婦」「ホームヘルパー」サービスとの併用
- 第23回 毎月1回の定期訪問–お母様外出中の娘様の看護‐
- 第22回 通院付き添い-「定期通院」と「入院中、別の病院で受診」‐
- 第21回 有料老人ホームでの看護-医療依存度が高い方の入居をサポート‐
- 第20回 これから在宅介護をはじめるご家族の不安を軽減〜 退院直後の集中サポート 〜
- 第19回 対象者様の生活に合わせた介入
- 第18回 いつまでも元気で独居を続けたい
- 第17回 疾患を抱えてもずっと自宅で過ごせるように
- 第16回 呼吸器のリハビリを通してQOLを高める
- 第15回 入院中のリハビリを在宅でも
- 第14回 100歳を目指してリハビリ ~残された能力を最大限に~
- 第13回 最後まで自立した生活を ~認知症の母に娘が望むこと~
- 第12回 介護者不在時の代替看護 ~難病と向き合う家族~
- 第11回 住み慣れた自宅への帰宅 ~入院中の一時帰宅~
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