末期がん患者と親友との温泉旅行の事例
私たち訪問看護師は入院中の患者さんから、最期に自宅で家族と過ごす時間が欲しいからとか、息子・娘の結婚式には必ず出席したいからという希望を受けて、病院からの一時外出や外泊中の付き添いをさせていただく機会がある。
中にはかなり重篤な場合もあるのだが、たとえ外出中に死んだとしても構わないから必ず行きたいのだ!と訴える患者さんもいるのである。
ただし患者さん希望だと言っても病院や家族など周りの方々が外出に向けて様々な形で支援するからこそ、その希望が実現するのである。
今回ご紹介する事例では、時には大きなリスクを犯してでも外出したいと思う患者さんの心理、そして患者の願いを叶えようと一生懸命になって協力する周りの方々の姿を知っていただきたい。また一時外泊を通して、患者さんと周りの協力者の人達との絆がより強く結ばれる様を少しでもお伝えできたら本望である。
この事例の基本情報
対象者とそのご家族の基本情報
対象者 | 男性、50代、がん末期。 | ご家族 | 病院に入院中。娘さん、一時外出には親友が同行。 |
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対象者の 状態 |
余命1ヶ月。がん性疼痛あり医療用モルヒネ投与、人工肛門。 少しなら自力歩行可、外出時は車イス。体重・筋力減少、体力低下が著しい。 |
ご要望
もう一度親友と温泉旅行に行きたい。
当社が提供した看護ケアの内容
・日帰りの温泉旅行中の見守り。
・疼痛管理、脈拍・体温・血圧等の測定、歩行介助、入浴介助。
・人員 看護師1名。
・時間 病院から温泉施設の往復、半日間。
本事例のポイント
1.患者と周りの人達の強いこころのつながり。
2.外出中に急変するリスクを犯してまで外出を希望する患者と、一生懸命になって協力する関係者。そこまでして一時外出を行なう意義とは何であったのか。
その他の利用事例
- 第28回 遠方の病院への転院
- 第27回 遠方で行われる結婚式への出席
- 第26回 ご家族の睡眠をサポートする「夜間の在宅看護」
- 第25回 プライベート看護を「すぐ利用したい」
- 第24回 他事業所の「家政婦」「ホームヘルパー」サービスとの併用
- 第23回 毎月1回の定期訪問–お母様外出中の娘様の看護‐
- 第22回 通院付き添い-「定期通院」と「入院中、別の病院で受診」‐
- 第21回 有料老人ホームでの看護-医療依存度が高い方の入居をサポート‐
- 第20回 これから在宅介護をはじめるご家族の不安を軽減〜 退院直後の集中サポート 〜
- 第19回 対象者様の生活に合わせた介入
- 第18回 いつまでも元気で独居を続けたい
- 第17回 疾患を抱えてもずっと自宅で過ごせるように
- 第16回 呼吸器のリハビリを通してQOLを高める
- 第15回 入院中のリハビリを在宅でも
- 第14回 100歳を目指してリハビリ ~残された能力を最大限に~
- 第13回 最後まで自立した生活を ~認知症の母に娘が望むこと~
- 第12回 介護者不在時の代替看護 ~難病と向き合う家族~
- 第11回 住み慣れた自宅への帰宅 ~入院中の一時帰宅~
- 第10回 沖縄への2泊3日の船旅 ~転院時の看護師付き添い~
- 第9回 娘さんに生まれてきた余裕 ~退院直後の家族支援~
- 第8回 新郎の母を結婚式に参加させたい ~結婚式の看護師付き添い~
- 第7回 末期がん患者と親友との最期の温泉旅行 ~病院からの一時外出~
- 第6回 ご自宅での看取り看護 ~早朝・夜間・深夜の長時間看護~
- 第5回 “食べたい”欲求が強い母 ~自宅での糖尿病の治療~
- 第4回 無理をしすぎない家族の介護 ~昼間一人きりになる患者さんの訪問看護~
- 第3回 「最期まで夫を看てあげたい」 ~がん終末期の訪問看護~
- 第2回 「奥様が歩けるようになりました!」 ~自宅でのリハビリ~
- 第1回 「わたしだけの看護師が欲しい」 ~難病患者の精神面の看護~