訪問介護について About Home Nursing

自宅での糖尿病(食事療法、薬物療法、運動療法)の治療事例

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1.はじめに

 生活習慣病患者の増加が問題となっている。
 厚生労働省によると糖尿病の患者数は740万人、高血圧症は3,100万人、高脂血症は3,000万人にのぼり、三つ疾患のうちどれか一つを有する患者は国民の半数に上ると推計されるという。※1
 生活習慣病が改善されないままだと、脳卒中や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、糖尿病の合併症(失明・人工透析等)など重症化、合併症に進展する可能性が非常に高いと言われている。

 生活習慣病は不適切な食生活、運動不足、ストレス過剰、飲酒、喫煙などの不健康な生活習慣が原因で引き起こされる病気である。したがって治療方法はその悪い生活習慣を改めることに力点が置かれる。
 しかしながら、長年かけて習慣化した生活パターンを変えるのはそんなに簡単なことではない。
 自宅の生活は病院のように四六時中、誰かに管理されているわけではない。正しく治療を続けるには本人の意思の強さも必要なのであるのだが、残念ながら自己管理ができずに元の不健康な生活習慣に戻ってしまう患者さんも少なくないのだ。

 そんななか訪問看護の助けを受けたことで見事に生活習慣の改善に成功した事例がある。

※1生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会「生活習慣病対策の総合的な推進について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0725-7d.html

2.娘さんの心配事

 真弓さん(仮名)は一人暮らしのお母様の病状が悪化することを心配していた。
 「糖尿病や高血圧、心臓にも持病があるのに、カロリーや塩分を気にも留めないで、自分の好きなものを満足いくまで食べるのよ。私がいくら駄目だと言っても、全然言うことを聞いてくれないのよ。」

3.糖尿病のお母様

 お母様は食事のバランスが崩れると体が敏感に反応する体質である。食生活が乱れるとすぐに高血糖や足のむくみとして現れるのである。
 糖尿病治療の基本は「食事療法」、「運動療法」、「薬物療法(飲み薬やインスリン注射)」の3つであり、特に「食事療法」はもっとも重要な治療法である。
 しかしながらお母様の食に対する知識は不完全であり、食の重要性に対する認識が薄いようであった。主治医からは、自宅で食事のコントロールがうまく出来ない場合は入院して治療を行なう必要があると言われていた。

4.娘さんと看護師のご相談

 しかし、歩行が不自由で一人では外出もままならないお母様にとって、食べることが唯一の楽しみなのだ。テレビの通信販売で美味しそうな商品があると、注文せずにはいられないのだという。
 「このままだとまた入院になるわよ、と私が言うと『入院は絶対に嫌!病院のペースに合わせて生活しなくちゃいけないのはもう我慢できない』って言うのよ。わがままな人なのよね。」
 「食べる楽しみを制限してしまうのは精神的に辛いと思うので、食事の内容に気をつけてケアをしていきましょう。」と看護師は応じた。
 また、真弓さんは「オシッコが近くて夜中も2~3時間おきにトイレに行くのだけど、足元がおぼつかなくていつか転んで怪我しやしないか心配なのよ。」と言った。
 「夜間の見守りも行ないましょうか?」と看護師は提案した。
「お願いできるの?母は、家族に心配させまいと口には出さないけど、少しずつ体が弱ってくるにつれて不安が強くなっているみたい。看護師さんが側に付いてくれるなら安心すると思うわ。」
 こうして私たちの訪問看護が始まった。

5.糖尿病の食事療法

 お母様は宅配で届く栄養調整食を召し上がっている。糖尿病や高血圧の患者のためにカロリーや塩分が適正に管理されている。それだけでも充分な栄養が摂取できるのだが、時々おかずを大好物の納豆やトマト、もずく酢などに換えて欲しいと要求することがある。また突然「焼き芋が食べたい、おせんべいが食べたい。」と言い出すこともしばしばある。
 そのような時には看護師は栄養を計算して、元のおかずと食べたいものの交換や、ごはんの量を2/3に減らして一食400~500Kcalに抑えるようにするなどの調整を行なっている。
 通信販売で買ったサプリメントや健康食品も好んで召し上がるのだが、それに関しては成分や摂取量について主治医に必ず確認してから摂取するようにしている。

6.血糖値のコントロール(薬物療法)

 糖尿病の患者さんは食事の前に必ず血糖測定を行い、食後には血糖値を下げるためにインスリン注射を行なう。注射は患者自身で行なえるように自己注射器が普及しているが、認知症で正しい判断ができない、目が悪い、手先が上手く動かせないなどの場合は家族や看護師が代わりに行なう必要がある。
 また、高血糖だけでなく低血糖にも注意しなくてはならない。血糖値が低くなりすぎると、最悪の場合は意識を失い生命に関わる危険な状態になる。
 そのためお母様の食事量が少なく充分な糖分を摂取できなかった場合は、看護師の判断で注射を中止している。さらに万が一低血糖症状が現れたときのために、すぐに糖分を補給できるようと黒砂糖をいつも身近に置いている。

7.糖尿病の運動療法

 糖尿病治療では運動療法も有効である。運動はインスリンの働きを助けて血糖値を下げる効果がある。また、肥満を解消することによりインスリンの効きやすい体質へ改善し、薬がいらなくなることもある。
 当社が訪問を始めた当初は、体調不良で歩行練習ができない日が多かった。まずは食事療法と薬物療法で血糖値を安定させることを目指した。半年が過ぎたころから体調の良い日が増えてきたので、一日に3回程度、応接間を4~5周する運動を行なっている。
 ただし、高齢者の場合は運動のやりすぎにも注意が必要である。骨密度が低下していることから転倒によって容易に骨折し、それをきっかけに寝たきり状態になることが多いからである。歩行訓練時には側で体を支え、転倒・転落などの事故が起こらないよう細心の注意を払っている。 。

8.現在の状況

 当社が訪問を始めてから約2年が過ぎようとしている。
 手厚い体制でサポートしている結果、状態に良い変化が見られている。
 相変わらずお母様の食に対する嗜好性は強いが、幸いなことに医師や看護師が言うことは素直に受け入れてくれる。今では一日三食以外の間食は一切しなくなった。また用意した食事はほとんど残さず召し上がっている。
 病院の定期検診でも血糖値は安定している。検診結果が良かったことについて、「この間お医者さんに褒められたのよ。」と嬉しそうに娘さんへ話していた。

 担当の看護師は次のように語る。
 「血糖値のコントロールがうまく出来ていることが自信につながっています。自分のペースで自宅生活を送りながら、大好きな食事も楽しむことができる。そのことをお母様はとても誇らしく思っているのですよ。」

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