無縁社会での訪問看護の役割
日本は世界で最も高齢化が進む国です。その中で、2010年ごろからテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに、「無縁社会」であることが社会問題化しています。今回は、人と人とのつながりが希薄になっている社会において、訪問看護が果たす役割についてまとめました。
進む高齢化と無縁社会
平成26年版高齢社会白書によると、日本の高齢化率は25.1%で、過去最高値を更新しました。これは、総人口のほぼ4人に1人が65歳以上であることを示しています。平成72年にはさらに高齢化が進展し、2.5人に1人が65歳以上になる予想です。その中でも、一人暮らしの高齢者世帯が男女ともに顕著に増加しています。
そして「無縁社会」とは、未婚率の上昇やインターネット社会の進展、長引く不況など、様々な要因によって人間関係が希薄になった社会のことです。単身の高齢者世帯は、とりわけ家族関係や地域とのつながりが少ないケースも多く、孤独死などの問題につながりやすくなっています。
地域に密着した訪問看護の果たす役割
訪問看護とは、看護師が医師の指示や連携に基づいて、居宅を訪問して行う看護活動のことです。その中には、検査や治療を促進する看護のほかに、日常生活の看護や心理状態のケアなども含まれています。全国には約7500箇所の訪問看護ステーションがあり、施設数はこの数年で増加傾向にあります。
訪問看護は、地域包括支援センターや医療機関と連携して行われることが多く、そこには高齢者と地域社会とのつながりが生まれます。そのため、地域に根差した活動として高齢社会において重要な役割を担っているのです。とりわけ患者が訪問看護を受けることにより、地域社会とのつながりを実感できることや見守りの体制ができる面が注目されています。
無縁社会の克服に向けた動きと訪問看護
高齢の単身者にとって、外とのつながりが訪問看護だけという状況も考えられます。その中で訪問看護師には、医学的な知識やスキルに加えて、高齢患者との信頼関係の構築やケアマネジャーや介護士などと連携していくコミュニケーションスキルも求められてくるでしょう。患者の周辺状況を適切に把握し、支援していく必要があります。無縁社会を克服するためには、地域で協力・連携して、新しいつながりを持った社会を作るしかありません。政府も地域包括ケアシステムの実現に向けて取り組んでおり、訪問看護がさらに推進されていくことが期待されています。
無縁社会は、人と人の関係が薄くなった社会のことですが、地域における新たなつながりを作っていくことで問題を克服できます。中でも、訪問看護は今後ますます重要な役割を担うようになっていくでしょう。