訪問看護とターミナルケア
「人生の最後の時期を住み慣れた自宅で迎えたい」と癌などの疾患が進行した患者が考えたときに利用されるのが訪問看護によるターミナルケアです。訪問看護によるターミナルケアはどのようなものでしょうか。
訪問看護におけるターミナルケアとは
ターミナルケアとは、医師によって余命数週間から数か月と診断され、治療によって治る見込みがないと判断された終末期の患者に対して行うケアです。延命治療や心身の機能の維持を目的とする治療は行わず、痛みの管理などの症状緩和、心のケアを中心とした看護ケアを行うことを指します。看取りケアともいわれるものです。専門の施設内でターミナルケアを実施するホスピスなどもありますが、残された時間を住み慣れた自宅で過ごしたいと考えている患者に対しては、訪問看護によるターミナルケアが行われています。訪問看護師は、利用者が穏やかな気持ちで残された日々を少しでもよりよく家族と過ごせるよう、サポートする役割を担っています。
ターミナルケアで求められる訪問看護の体制
訪問看護でターミナルケアを行うにあたっては、他の医療施設との連携が欠かせません。まず、利用者の急変に対応できるように、訪問看護ステーション自体が24時間営業である必要があります。患者の容態が変わり痛みが増したときにも、かかりつけ医の往診を受けられる体制が求められ、緊急時に入院できる病院を確保しておくことも大切です。訪問看護師はターミナルケアにおいて、日常的な療養上の世話やバイタルチェック、痛みなどの症状管理のほかに、利用者や家族の精神的なケアも求められます。
介護保険のターミナルケア加算とは
訪問看護でターミナルケアが行われた場合、介護保険の利用においては、利用者1名につき1事業所のみ2000点のターミナルケア加算を行うことができます。ターミナルケア加算を行うための要件として、「死亡日または死亡日の前日までの15日間に2回以上訪問看護を行っている」ことが定められています。事前に家族に対して、ターミナルケアの支援体制について説明をしていることも要件です。また、訪問看護記録書には、終末期の身体状態の変化、利用者および家族の精神状態の変化やそれに対して行ったケア、看取りに関する利用者や家族の意向の経過等について記載することが定められています。
ターミナルケアの訪問看護では、医療面でのケアはもちろん、精神的なケアも求められます。通常の訪問看護よりも、利用者や利用者の家族の心に寄り添いサポートする気持ちがいっそう必要な看護サービスといえるでしょう。