第21回 有料老人ホームでの看護
-医療依存度が高い方の入居をサポート‐|詳細
1.ご相談までの経緯
Cさんは4年前に認知症の診断を受けたことをきっかけに、お一人暮らしの自宅から、介護付き有料老人ホームに移りました。認知症以外の病気は特に無く、高齢による衰えはありますがADLもある程度自立した状態で、入居後まもなくホームの友人やスタッフとも関係を築かれ、穏やかな生活を送っていました。隣県に住む娘様は、年に数回ホームを訪問。お元気なCさんの様子や、明るい雰囲気のホーム長・スタッフの様子から、「安心して任せられる家」としてホームを信頼していました。
入居から4年が経過し、次第にADLが衰えてきたCさんは肺炎を発症し入院。「胃ろう管理(朝昼晩の栄養注入)」と「胃ろう時の痰吸引」のケアが必要になり、長期入院によるADL低下で身体介助全般も必要になりました。退院後の生活について、娘様はホーム長と面談。ホームには日中勤務の看護師はいますが、夕方から翌朝まではいないため、夕方の「胃ろう」「吸引」に対応できません。娘様はホーム長より「入居継続は難しいため、看護スタッフが24時間常駐しているホームへの転居を検討してほしい」との説明を受けました。
転居についてCさんに伝えると、Cさんは以前のような流暢なコミュニケーションは難しくなってしまいましたが、「転居したくない」との気持ちを娘様に訴えました。娘様も、住み慣れたホームからの転居はCさんにとって大変な負担になると感じ、信頼できるスタッフがいる現在のホームで入居を継続できないかと悩んでいました。
娘様はホームに所属するケアマネジャーに何か方法は無いか相談。ケアマネジャーから「自費の訪問看護サービス」の利用について提案を受けました。「入居が継続できるのであれば、是非サポートしてほしい」との娘様の希望で、当社にお問い合せをいただきました。
2.退院に向けた話し合い
お問い合せを受けて、当社看護師はホームを訪問し、娘様・ホーム長と面談しました。当社看護師は、複数名の看護師でスケジュールを組み、毎日訪問できることを説明。また、胃ろう・吸引の他に、肺炎再発予防のための入念な口腔ケアと、就寝前のイブニングケア(全身の清潔ケア、着替え、など)を提案しました。「これ以上状態が悪くならないように、出来るだけのことをしてほしい」との娘様のご要望をいただき、夕方から就寝までの医療行為とケア全般を任せていただくことになりました。訪問時間は、ホーム看護師が退勤する17時から、Cさんの就寝時間の21時までとなりました。ホーム長とは、ホームスタッフとの情報共有の仕方について話し合い、当社看護師の訪問・退出時に情報申し送りと連絡用PHSの受け渡しを行うことを確認しました。
また、当社看護師は娘様と一緒にCさんが入院中の病院を訪問。Cさんにご挨拶させていただき、病棟看護師からはケアの仕方や注意点についてオリエンテーションを受けました。
3.ホームでの生活がスタート
半年間の入院を経てホームに退院された日から、当社看護師の訪問もスタート。看護師は、「胃ろう」「吸引」「口腔ケア」「着替え」のほか、「バイタルサインのチェック」「軽度のリハビリ介助」「胃ろう・吸引器材の洗浄」などのケアをご提供。ホームスタッフとは伝達漏れが無いよう注意を払い、「体温・血圧などの数値」「胃ろうからの栄養摂取の状況」「身心の様子」などを毎回の訪問・退出時に情報共有しました。
Cさんにとって退院後の生活は、看護・介護面で以前とは違いますが、戸惑われることもなく、住み慣れたホームに戻って安心された様子でした。時折、胃ろうの際に吐き気を催すこともありましたが、その際は往診医の判断で栄養量を調整。胃ろうについては、往診医・ホーム・当社で特に気をつけて情報共有を図りました。その他に目立った問題はなく、身心の状態は安定していました。
娘様は、以前よりも頻回にホームを訪問しCさんの様子を確認しました。当社看護師からも、日頃の様子やケア内容についての報告を娘様に毎月郵送し、普段の様子を知っていただきました。退院3か月目に娘様から当社にお電話をいただき、「父がホームで穏やかに過ごしている様子を確認するたびに、戻れて良かったと改めて思います。ホームのスタッフさんとスーパーナースの看護師さんのサポートのおかげです。本人も安心して過ごせていると思うし、私も安心して父をお任せできます」とのお言葉をいただきました。
退院から半年経過した現在も看護師の訪問は続いており、Cさんのホームでの生活をサポートしています。
完
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